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映像の世界遺産とも呼べるイタリアの至宝。
シチリアの大地に最後の輝きを放つ 貴族社会の壮麗なる落日
抬頭する新勢力と滅びゆく者の美学を豪華絢爛に描く一大叙事詩 |
第16回(1963年)カンヌ国際映画祭で最高賞〈グランプリ〉に輝いた巨匠ルキーノ・ヴィスコンティの『山猫』。これは、ヴィスコンティが唯一自身を語った意味でも代表作中の代表作であり、フランシス・フォード・コッポラ、ベルナルド・ベルトルッチ、マーティン・スコセッシら後の巨匠に大きな影響を与えた作品である。ヴィスコンティという唯一無二の才能のみが創り得た、もう二度と創ることのできない華麗なる一大叙事詩。イタリアの至宝、映像の世界遺産とでも言うべき作品が国を挙げての文化事業として復元され、撮影監督ジュゼッペ・ロトゥンノの監修で何度も改良を重ね今世紀に入ってようやく終了、「イタリア語・完全復元版」として甦った。そして、更なる輝きと艶やかな色彩を取り戻した映像に溢れるのは、特殊効果やデジタル映像の力に溺れない映画本来の豊かな時間、そして極上の陶酔感だ。それは初めて観る者も、そして既に観ている者をも虜にするに違いない。
原作はシチリア貴族、ジュゼッペ・トマージ・ディ・ランペドゥーサ(1896〜1957)が死の直前に完成させた生涯唯一の長篇小説。貴族ランペドゥーサが書き、ミラノを統治した名門貴族ヴィスコンティ家の末裔ルキーノが映像にした、滅び行く貴族社会の最後の輝き。そこには、本物だけが持つ鋭い洞察力と豊かな感性こそが創り得るドラマがある。なかでも特筆すべきは映画史上の伝説ともいえる、全篇の約1/3を占める大舞踏会だ。これこそまさにヴィスコンティ美学の真髄である。
『山猫』の日本初公開は、大幅に短縮された英語国際版で1964年。そして1981年にイタリア語のオリジナル完全版がようやく公開された。オリジナル完全版は物語の完成度が遥かに高いものの、残念ながらプリントの保存状態が悪く、発色という点では国際版の鮮やかさに及ばなかった。そして今回上映される「イタリア語・完全復元版」は、両版の良い部分が1つになった決定版と言えるだろう。 |
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