

イザベル・ユペール
(ナタリー)
Isabelle Huppert
1953年3月16日、パリの16区の裕福な家庭に生まれる。
幼い頃から芸術に親しむ教育を受け、4人いる兄弟・姉妹もそれぞれアートおよび教育の分野で活躍中。
ユペール自身も、いまやフランスを代表する演技派の女優として押しも押されもせぬ地位を築いている。
パリ近郊サン=クロードのリセを卒業後、ヴェルサイユの音楽・演劇学校で演技の基礎を学び、さらにパリの国立高等演劇学校にて研鑽を積む。
1972年、イヴ・モンタンとロミー・シュナイダー共演、クロード・ソーテ監督による『夕なぎ』のマリート役で本格的な映画デビューを飾る。
さらに1974年にはベルトラン・ブリエの代表作のひとつ『バルスーズ』に出演し、次第に頭角を現す。
1977年、クロード・ゴレッタ監督がパスカル・レネの原作をもとに映画化した『レースを編む女』(シネクラブ上映)でヒロインのベアトリス(ポンム)役を演じ強い印象を残すとともに、
その年のセザール賞最優秀女優賞の候補にも選出。これを皮切りとして演技派の女優としての評価を高め、
クロード・シャブロル監督『ヴィオレット・ノジエール』(シネクラブ上映/78)、アンドレ・テシネ監督『ブロンテ姉妹』(79)、ジャン=リュック・ゴダール監督『勝手に逃げろ/人生』(79)、
モーリス・ピアラ監督『ルル』(シネクラブ上映/80)など、次々と名だたる監督の作品に出演を重ねるとともに、
マイケル・チミノ監督『天国の門』(80)、ジョゼフ・ロージー監督『鱒』(シネクラブ上映/82)など、英語圏の監督作品にも積極的に出演を重ねて国際的な評価も得る。
1988年にはシャブロル監督『主婦マリーがしたこと』で緻密にして大胆な演技を披露し、以降シャブロル作品になくてはならない存在となり、『沈黙の女/ロウフィールド館の惨劇』(95)でセザール賞最優秀女優賞を獲得。
さらに鬼才ミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』(01)で見せた衝撃的な演技も印象に強く、知的演技派女優の名を欲しいままにする。
近年では本作以外にも、『アスファルト』(15)のサミュエル・ベンシェトリ監督、『母の残像』(15)のヨアキム・トリアー監督をはじめとする才能ある若手作家の作品に出演。またポール・ヴァーホーヴェン監督最新作「ELLE」(16)でもその演技が絶賛され、注目を集めている。

アンドレ・マルコン
(ハインツ)
Andre Marcon
1948年7月6日、サン=テティエンヌに生まれる。
舞台俳優としてディディエ・ブザスやヤスミナ・レザらの演出による舞台に数多く出演し、なかでもヴァレール・ノヴァリーナ作品の舞台に欠かせない俳優としても知られる。
またその一方、70年代より、映画、テレビでも主に脇役として活躍してきた。
映画では、ジャック・リヴェットの『ジャンヌ/薔薇の十字架』と『ジャンヌ/愛と自由の天使』(ともに94)のジャンヌ・ダルク二部作のほか、『パリでかくれんぼ』(95)、
『ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー』(DVD/09)と出演を続け、オリヴィエ・アサイヤスの『8月の終わり、9月の初め』(シネクラブ上映/98)、『感傷的な運命』(F/00)、『カルロス』(10)、『5月の後』(12)にも連続出演し、渋い演技を披露。
そのほか、マリオン・ヴェルヌーの『だれも私を愛さない!』(93)、ベルトラン・ボネッロの『ポルノグラフ』(VHS/01)など、新鋭の作品にも積極的にかかわり、
ギヨーム・ガリエンヌの自作自演による大ヒット作『不機嫌なママにメルシィ!』(13)でも脇役として絶妙の味を見せていた。演技派の俳優ながら、意外なことに賞関係にはあまり縁がなく、
グザヴィエ・ジャノリの『偉大なるマルグリット』(15)でようやくセザール賞の助演男優賞候補に。
なお、ミア・ハンセン=ラブ作品へは、『あの夏の子供たち』に続いて、今回が2作目の登板となる。

ロマン・コリンカ
(ファビアン)
Roman Kolinka
1986年9月16日、パリに生まれる。
母は悲劇的な死を遂げた女優のマリー・トランティニャン、父はロックグループ、テレフォンを率いるリシャール・コリンカ、
そしてもちろん祖父はマリーの父であるジャン=ルイ・トランティニャンというアーティスト一家に生まれ、
子どものころ、祖母ナディーヌの作品に母のマリーとともに出演するなど、早くから映画の世界に親しんできた。
母の死後、俳優の道に進むことを心に決め、いくつかの短編映画に出演ののち、オリヴィエ・アサイヤスの『5月の後』(12)で本格的な映画デビューを果たす。
続いて、ピエール・ゴドーの「Juliette」(13)では、恋多きヒロインと恋に落ちる青年のひとりを演じて印象を残し、
さらにミア・ハンセン=ラブの『EDEN/エデン』(14)で主人公ポールの親友でイラストレーターのシリル役を演じて人気急上昇。
そして本作では、イザベル・ユペールが演じる哲学教師の愛弟子でルソー的なユートピアを求める青年ファビアン役を翳りを秘めて魅力たっぷりに演じ、新たな才能として注目を集める。

エディット・スコブ
(イヴェット)
Edith Scob
1937年10月21日、パリに生まれる。
文学を学んでいたが、ジョルジュ・フランジュに見いだされ、『壁にぶつかる頭』(シネクラブ上映/59)に端役出演し、
続く『顔のない眼』(60)の顔を失ったヒロインとして本格的な映画デビューを果たす。
その後もフランジュ作品になくてはならない女優として、『テレーズ・デスケルー』(シネクラブ上映/62)、『ジュデックス』(シネクラブ上映/63)、
『山師トマ』(シネクラブ上映/65)などに出演。当時より個性派の女優として注目を集め、フランジュのほか、
ルイス・ブニュエル作品『銀河』(69)、セルジョ・ゴッビ作品『雨のエトランゼ』(71)、アンドレ・カイエット作品『愛の地獄』(77)など、ひと癖ある作品に出演を重ねる。
他にレオス・カラックスの『ポンヌフの恋人』(91)、ペドロ・コスタの『溶岩の家』(シネクラブ上映/94)、ラウル・ルイスの『見出された時 「失われた時を求めて」より』(98)など、作家性の強い作品に好んで出演。
また、彼女の稀有な存在感に惹かれた監督も数多く、『薬指の標本』(04)のディアーヌ・ベルトラン監督、『劣等生』(シネクラブ上映/16)のポール・ヴェキアリ監督など、要所での起用も増える。
そのほか、オリヴィエ・アサイヤスの『夏時間の庭』(08)や、カラックスの『ホーリー・モーターズ』(12)での演技も印象に深い。