アンナは夫のDVから逃れ、13歳の息子ヴァレリオとローマからトリノへ向かう。
陽気で心優しい親友カルラを頼って、心機一転やり直すつもりだ。 
だが、見知らぬ土地での再スタートはそう簡単なことではない。
カルラはさりげなく二人を支えるが、苛立ちと孤独を抱えた親子の気持ちはすれ違っていくばかりだった。


過ちを嘆いたり、幸運を忘れたり、それでも人生より素晴らしいものはない。
北イタリアの美しい街トリノを舞台に、新たな人生の可能性を謳いあげる感動作。


人生の新たなスタートに向けて歩もうとする母と子、そしてその二人をさりげなく見守る心優しき人たち。『はじまりの街』は、住み慣れた世界を捨て、見知らぬ土地で生きていく親子が、嵐を乗り越え、 確実に未来へと進み始めていくまでを描いた珠玉の人間ドラマだ。いつだって人生はやり直すことができる。この力強いメッセージを本作に託したのは、家族をテーマとした映画で絶えず社会の弱者に寄り添ってきたイタリアのイヴァーノ・デ・マッテオ監督。厳しい現実に投げ込まれてしまった母子を通して、人生の可能性を指し示す作品を作り上げた。先が見えなくても、ほんの少しの勇気と人を愛する心があれば、人生は変わっていく。ラストに見えるささやかながらも確かな一歩が感動の涙を誘うことだろう。

思春期の輝きと、イタリアの二大女優が体現する女の友情

平凡な家庭生活から一転、厳しい世界に身をさらすことになる一人の女性にして母親、アンナを深みのある演技で体現するのは、イタリアを代表する女優、『はじまりは5つ星ホテルから』『母よ、』のマルゲリータ・ブイ。 そして、アンナの親友で、自由に生きる独身のカルラを演じるのは、『レインマン』などで世界的に活躍するヴァレリア・ゴリーノ。また13歳の少年ヴァレリオの瑞々しい存在感も本作の大きな魅力だ。深い湖のような美しい瞳と世界を変えてしまうような笑顔に、観る者は心をぐっとつかまれるに違いない。体現するのは、アンドレア・ピットリーノ。美形男子を多く輩出しているイタリアから、また美しき新星が飛び出した。

美しき街トリノ。そこに息づく人間模様

一面の落葉が黄金色に輝く公園。石畳の裏通り。アーチ橋の下を流れる河の煌めき。母子で訪れる国立映画博物館…。美しいトリノの街が、この人間ドラマの舞台だ。そしてここには、アンナとヴァレリオ以外にも、故郷を離れて生きる人々の日常がある。ヴァレリオが淡い恋心を抱く東欧出身のストリートガールや、過去を囁かれるフランス出身の元サッカー選手のビストロオーナーなど、ヴァレリオの孤独に共鳴する人々がさりげなくも丁寧に描かれる。そしてラストに流れる、『007 ゴールドフィンガー』テーマ曲などパンチのある歌唱で知られるシャーリー・バッシーの名曲"This Is My Life"が、今を生きる全ての人々を祝福するかのように力強く響く。

未来よ こんにちは
監督:イヴァーノ・デ・マッテオ「幸せのバランス」「われらの子供たち」
出演:マルゲリータ・ブイ、ヴァレリア・ゴリーノ、アンドレア・ピットリーノ、カテリーナ・シェルハ、ブリュノ・トデスキーニ
脚本:ヴァレンティーナ・フェルラン、イヴァーノ・デ・マッテオ 撮影:ドゥチオ・チマッティ 美術:アレッサンドロ・マラッツォ 音楽:フランチェスコ・チェラージ 
製作:マルコ・ポッチオーニ、マルコ・ヴァルサニア、ライシネマ
2016年/イタリア=フランス/107分/5.1ch/シネスコ/原題:LA VITA POSSIBILE/英題:A POSSIBLE LIFE/日本語字幕:吉岡芳子 
提供:クレストインターナショナル、朝日新聞社 配給:クレストインターナショナル