1976年、ニューヨーク。ドイツからアメリカに渡って結婚し、優しい夫と娘に囲まれ幸せな日々を送るハンナ。夫の長年の研究が表彰され、その祝賀ホームパーティーの当日。ハンナは、パーティーで使うテーブルクロスを受け取りに、クリーニング店を訪れる。所在無げに待つハンナの耳に、突然、テレビから"あの声"が飛び込んで来る。声に導かれるようにテレビに近づくと、そこに映っていたのは、死んだと思っていたかつての恋人トマシュだった。
時は遡り1944年、ポーランド。ハンナはアウシュヴィッツ強制収容所でトマシュと出会い恋に落ちる。政治犯として収容されたトマシュの特権を利用し、逢瀬を重ねる二人。レジスタンス仲間に、収容所の実態を写したフィルムのネガを届ける任務を負い、脱走を計画していたトマシュは、どんなに危険が増そうとも、ハンナを一緒に連れて行こうと心に決めていた。その頃、ハンナは激しいつわりに襲われるが、トマシュには妊娠を伝えずにいた。
ついに脱出決行の日。トマシュは、密かに用意したドイツ軍の制服を身に着け、ナチスの分隊長に成り済ましハンナを呼びだす。 「73804番!来い!」。こうして門番をだまし、決死の脱走に成功。ようやく手にした自由の中で共に生きることを誓うふたりだったが、戦時中の混乱の中でハンナはトマシュと生き別れてしまう。彼は生きていると信じていたハンナだが、捜索を依頼した赤十字社からは「推定死亡」とされてしまっていた。 しかし、テレビに映っていたのは、確かにトマシュだった。30年の時が過ぎても、私は決して忘れない。命を救ってくれたあの声、愛を囁いてくれた声。忘れることのない、愛しい人の声…。次々と蘇ってくるトマシュと過ごした美しくも過酷で哀しい愛の記憶。クリーニング店から戻ったハンナは、茫然自失のまま自室に入る。そして記憶に後押しされるように、赤十字社の番号に電話をかけるのだが…。
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