すべてを捨て、港町ハンブルクにやってきた女優ヨンヒ。待ち人は来ない。 月日は流れ、旧友との再会によって女優復帰を考えるようになるのだが…。 キム・ミニが初の栄冠、ベルリン国際映画祭女優賞に輝いた話題作 第67回 ベルリン国際映画祭 主演女優賞(銀熊賞)キム・ミニ受賞 監督・脚本:ホン・サンス 出演:キム・ミニ、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョン・ジェヨン、ソン・ソンミ、ムン・ソングン 製作:チョノンサ・フィルム 撮影:キム・ヒョング、パク・ホンニョル 照明:イ・ウィヘン 録音:ソン・イェジン スチルカメラマン:キム・ジニョン 編集:ハム・ソンウォン 音響:キム・ミル 2017年/韓国/101分/ビスタ/5.1ch/カラー 原題:밤의 해변에서 혼자 英題:On the Beach at Night Alone 日本語字幕:根本理恵 配給:クレストインターナショナル
『正しい日 間違えた日』(15)で運命的に出会ったホン・サンスとキム・ミニ。続く『夜の浜辺でひとり』でキム・ミニが見せるのは、儚くも荒々しい美しさを持つ、かつて見たことの無いヒロイン像だ。「女優をこれほど魅力的に撮影する監督は他にはほとんどいない」と激賞されたが、まさに監督との特別な信頼関係から引き出されたと言えるだろう。誰もがその存在感に圧倒されるに違いない。
舞台は二つの海岸都市、ハンブルクと江陵(カンヌン)。不倫スキャンダルにより、キャリアを捨て異国に逃げてきたヨンヒ(キム・ミニ)は、訪ねてくると言ったまま姿を見せない恋人を待ちながら、自分の真意が分からずにいる。月日は流れ、韓国へ戻ったヨンヒは、旧友たちと再会したことで女優復帰を考え始める。そしてひとりカンヌンの浜辺を訪れ、意外な方法で自分の心に向き合うことになるのだが……。
未来が見えない中で、自分らしくありたいともがくヨンヒの周囲には、恋人の不在や仕事の空白がブラック・ホールのように広がり、そこにはホン・サンスの繊細な仕掛けが施されている。そんなヨンヒの微妙な心の揺れが多くの現代女性と共鳴し、深い余韻を残すのだ。ここに、ホン・サンスによる比類なき女性賛歌が誕生した。