人生の新たなスタートに向けて歩もうとする母と子、そしてその二人をさりげなく見守る心優しき人たち。 『はじまりの街』は、住み慣れた世界を捨て、見知らぬ土地で生きていく親子が、嵐を乗り越え、確実に未来へと進み始めていくまでを描いた珠玉の人間ドラマだ。 いつだって人生はやり直すことができる。この力強いメッセージを本作に託したのは、家族をテーマとした映画で絶えず社会の弱者に寄り添ってきたイタリアのイヴァーノ・デ・マッテオ監督。 厳しい現実に投げ込まれてしまった母子を通して、人生の可能性を指し示す作品を作り上げた。先が見えなくても、ほんの少しの勇気と人を愛する心があれば、人生は変わっていく。 ラストに見えるささやかながらも確かな一歩が感動の涙を誘うことだろう。
夫のDVから逃れ、13歳の息子ヴァレリオ(アンドレア・ピットリーノ)と共に、ローマから親友が暮らすトリノにやってきたアンナ(マルゲリータ・ブイ)。
トリノ駅に迎えに来たカルラ(ヴァレリア・ゴリーノ)は、傷心のアンナとヴァレリオを笑顔で抱きしめ、自身が住む小さな家の一部屋を明け渡してくれた。
落葉が輝く晩秋の街。一刻も早く生活の基盤を築こうと、仕事探しに焦るアンナ。一方、活発なサッカー少年だったヴァレリオは、孤独をかかえて自転車で走り回るだけの日々。そんなある日、夫からアンナの父親を介してヴァレリオ宛てに小包が届く。息子にとって自分の選択は正しいのだろうかと心乱されたアンナは、その手紙をヴァレリオから隠してしまう。
ついにアンナの仕事が決まり、足取り軽く帰宅した彼女を待っていたのは、手紙を読んでしまったヴァレリオの失踪。近所のビストロオーナー、マチュー(ブリュノ・トデスキーニ)の助けもあり、ヴァレリオを見つけるが、彼の心は硬い鎧をまとったままだった。
人々の心に支えられ、人生の再スタートに向けて歩もうとするアンナとヴァレリオに、ある朝、小さな奇跡が訪れる…。
1966年1月22日、イタリア・ローマ生まれ。劇団での活動を経て、1990年俳優としてのキャリアをスタートさせ多くの作品に出演。99年には初のドキュメンタリー作品「Prigionieri di una fede」を手掛け、 短編「Provocazione」(00)を発表。2002年に「Ultimo stadio」で長編劇映画の監督デビュー。 短編「Pillole di bisogni」(08)、オムニバス映画「All human rights for all (Art. 10の章) 」(08)に続き、 長編ドラマ「La bella gente」(09)、テレビシリーズCriminiの第2エピソード「Niente di personale」(10)を制作。2012年に発表した『幸せのバランス』は、ヴェネチア国際映画祭に出品され、 主演のヴァレリオ・マスタンドレアにヴェネチア映画祭パシネッティ賞男優賞をもたらした。またマスタンドレアはイタリアのアカデミー賞ダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞主演男優賞を受賞。 2014年『われらの子供たち』(2015年イタリア映画祭上映)では、アレッサンドロ・ガスマンがナストロ・ダルジェント賞主演男優賞を受賞。 本作『はじまりの街』は長編6作目となる。 マッテオは、監督、ドキュメンタリスト、俳優として、映画のみならず、舞台、テレビ等でも幅広く発信を続けている。