英国のショービジネス界で活躍するスティーヴとロブは、イタリアは北から南まで素晴らしい眺望のホテルと美食を巡る旅という“おいしい”仕事を依頼される。
燦々と陽光あふれるイタリアで美食にワインに旅先の恋。笑いが絶えない旅に見えて実は、スティーヴとロブもそれぞれが人生の曲がり角に来ていた。
旅の友は人生の友。忘れられない旅が今、始まる!
イギリスでは知らない人はいない人気コメディアン、スティーヴ・クーガンとロブ・ブライドンは、数年前にオブザーバー紙からの依頼でイギリスの湖水地方のレストランを巡り、そのグルメ記事を書いたことがあった。それが好評だったのか、今度はイタリアでという依頼が2人に舞い込んでくる。
ロブは自分の名前を冠したトーク番組も成功を収め、仕事は順風満帆。年の離れた妻とまだ幼い子供の父親としての責任から一時解放されるイタリア旅行に心をときめかせる。一方コメディアンとしてよりも今は俳優として活躍するスティーヴは、ロサンゼルスで撮影していたTVシリーズが打ち切りとなり、ちょうど仕事の端境期。長い間離れて暮らしている家族のことも気がかりだが、この“おいしい”仕事を引き受ける。
黒いミニクーパーをレンタルし長くつの国、イタリアを北から南へ。素晴らしい眺望のホテルと美食の旅は、ピエモンテ地方から始まり、続いてリグリア、トスカーナ、ローマ、カンパーニャ、そしてカプリで締めくくられることになっている。
パスタ、ジビエ、シーフード、そしてスイーツ。料理も景色も極上。なによりお互いに良きライバルであり友でもある2人にとって、気の置けない友人との会話は最高のスパイスだ。まさに“甘い生活”を満喫する旅が始まる。
今回の旅ではレストランガイドのほかにイギリスのロマン派詩人バイロンとシェリーの足跡も辿ることになっていた。バイロンは放蕩の末、イギリスを追放され、イタリアで退廃の日々を送り、シェリーはこの地で没している。そんな詩人が残した詩は、中年男の感傷にぴったりだった。若い男女の楽しげな様子を見ながら、もはや中年男の自分たちは眼中にないことを憂いてみる2人は、バイロンが泳いだという“詩人の湾”に船で向かう。
哀愁の漂うこの土地のせいか、それとも中年期に差し掛かった歳のせいか、美しい湾を一望しながらも感傷的になるロブとスティーヴ。200年後、自分たちはどう人の記憶に残るだろう。もし、どちらか一人でも忘れられていなければ、だけれど…。
ちょっとしたアバンチュールを味わったロブに、アメリカ映画への出演依頼の話が飛び込んでくる。自室でオーディションに向けての練習をしながら、まだ自分はイケるという思いと、「アメリカでは無名の」二流俳優の自分なんか…という思いがロブに押し寄せてくる。
一方で、仕事もプライベートも踊り場状態のスティーヴにとっては、ロブの挑戦が胸をざわつかせる。
そんな日は、ドライブのお供として散々イジってきた歌手アラニス・モリセットの歌だって心に響いてしまう。「大丈夫 うまくいく」。
ローマで、スティーヴのマネージャー・エマと、女性カメラマン・ヨランダと合流することになった。街を歩きながらローマを舞台にした名作映画に思いを馳せる4人。
実はヨランダは、前回のグルメ取材の時にスティーヴが一夜を共にした相手なのだが、気まずい再会ながらちゃっかり親密な気持を抱くスティーヴ。ロブはロブで、“詩人の湾”で関係を持った女性ルーシーから「また会いたい」と連絡を受ける。
罪の意識は感じながらも解放された気分をもう一度味わいたい。シンプルな生きる歓びに満ちたイタリアは、次第に彼らに変化をもたらしていく。
エマたちと別れて再び2人になったロブとスティーヴはポンペイへ。2000年前の遺跡との会話の後に、カプリ島の絶景が望めるというホテルへ車を走らせる。
その頃、スティーヴは、別居中の妻とイビサ島にバカンスにきている息子ジョーに対して、きちんと父親としての役目を果たすことを考え始めていた。元妻に連絡し、息子とナポリで落ち合う約束をとりつけたスティーヴは、ロブの部屋を訪れる。ナポリに行くには、ロブが敬愛するアル・パチーノの『ゴッドファーザー』シリーズゆかりの地、シチリアには回れないことを詫びるためだ。翌日、ジョーと、彼を連れてきたエマを含めた4人はカプリ島へと向かう。カプリ島はいよいよこの旅を締めくくる場所だ。仕事、恋、地位、名誉、家族…人生の折り返しを過ぎた中年男ロブとスティーヴは、旅の最後にどんな心のごちそうを得るのだろうか。